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「でも……死ぬなんて!例え子供がいなくたって結婚しよう!可能だろ!?」
自分の過ちを取り繕うようにして、凛太は必死に叫んだ。
だが、それは虚しく拒否される。
「いやっ!!私の……夢だったの。幸せな家庭」
初めて友奈は凛太と視線を合わせた。
夕焼けと重なり、友奈の瞳から溢れた雫が光を反射する。
夢を否定された純真無垢な女の子。彼女が取った行動は、もしかしたら当然のことだったのかもしれない。
「……もう、私の生きる場所はないよ。親にも合わせる顔がない。ならいっそ、この子と一緒に……」
それを、否定する言葉は浮かんでこなかった。自分も、これからは居場所のない生活を強いられるのだろう。
親の顔、友達の顔、優しかったそれらが、自分に牙を剥くようだ。
……だが、それがこの世界から逃げる理由には成り得ない。
ゆっくりと、友奈に向かって歩く。
「一旦落ち着け……友奈。考え直そう、今はきっと判断ができないだけだ」
そうだ、今さえ乗り切れれば……などと考えていた凛太の考えを、友奈は甲高い声で遮った。
「こないでっ!凛太こそ考えてよ……今がこの子と一緒にいられる最後の時間だよ。きっと私じゃ、親とかにも止められて死ぬ覚悟が揺らいじゃう。今しかないの!私の正しいと思うことをさせて!」
死ぬ覚悟、それは言葉からも痛いほど伝わった。
だが
「自分の行為を正当化すんじゃねぇっ!」
凛太は吠えた。
まるで、自分が正しいかと言うように。
だが、人は否定されることを嫌う。
「…………凛太まで、私を否定するんだね」
友奈はゆっくりと瞳に影を落として、
「わかった」
とだけ呟いた。
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