第1

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しばらくたったあと、兄は俺の青く赤く痛々しく腫れた顔と身体をみて笑った。 今までに見たことのない笑顔。 俺は兄が笑ってくれたことに喜びを感じると同時に、とてつもない恐怖を覚えた。 「俺はここを出ていく。2度とこの家には戻る気は無い。すまなかった。郁......」 あ、ぁ、ぁ 兄さんが玄関に向かっていく。逆光で兄さんの顔は見えない。行かないでっっ!その言葉はボロボロになった顔からは言えなかった。 怖い怖い…………… 殴られた恐怖と、自分の意志からの行動によって兄を失った。兄が出ていくのを止められなかった。 怖い痛い怖い ごめんなさい、俺が何も知らないのに突っかかって... 俺があの時兄さんにお父さんとお母さんの名前を出したから怒ったんでしょ? もうそんなことしないから、戻ってきてよ その後から俺は兄さんの姿を一切見なくなった。そして人との接触を嫌い、誰にも無関心に接するようにした。 俺が無人になれば誰も泣かないでしょ?
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