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一冊の古書を手にとった。もうずいぶん昔に出版された本なのだろう。表紙はボロボロになり、断面は日焼けで黄ばみ、ページをめくれば、激臭が鼻腔を襲う始末だ。
私は目に涙をためながら、古書をゆっくりと慎重に開く。ともすれば、破れてしまいそうなページに書かれた文字を目で追う。
オリジナリティ、文章力、描写力……などなど大事なものを色々となくしているなあ。心の中で酷評しながら、私は本を閉じた。
しかし、中でも際立ってなくしているのは、やはり読者というモノに違いない。
「ゆえに品位があるわけだが」
見知らぬタイトルがずらりと並ぶ本棚に古書を戻し、私はひとりほくそ笑む。
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