第4章 狂い桜のリビングデッド

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 動揺している溝内は、呪いを恐れ、警官を振り切って逃亡を続けている。逃亡の理由は、殺人罪から逃げるためか、それとも……。  そして、いまだ正体不明の第7の七不思議。レイアの話では、七不思議の7番目が書かれていない場合は、他の6つを体験したときに訪れる災厄のことを指しているかもしれない、とのことだった。 「隠された7番目の七不思議……」  レイアは“6つを体験すると死んじゃうとか村が壊滅するとか”などと言っていたが。 「村の壊滅……激減した人口……環境アセスメント……天然記念物の高嶺桜……偽装された七不思議……牧野さんの失踪……比久羅間の闇……――」  愛里の頭の中でパズルのピースが少しずつ揃っていく。  ふと、七不思議を探しに出かけた際の自身の台詞を思い出す。確か比久羅村を実験装置に例え、こう皮肉ったのだ。 『紫外線ランプや中から風を吹き出して外から埃や雑菌が混入しないようにするクリーンベンチですよ。排他的で、目的の細胞以外は育たないようにする』  颯太は“神楽坂さんらしい例えですね”と苦笑していた。 『きっと比久羅間村の七不思議も外敵の侵入を防ぐために人為的に作られたものなんじゃないですかね』  外敵の侵入を防ぐため……?  外敵とは?  外から村にやってくる人のことだろうか。  確かに、農薬事件から比久羅間村の人口は減る一方だった。実際、外敵は減ったのだろう。それが村の限界集落化を推し進めたのだが。 「野菜に農薬を混入させた犯人には明確な目的があった……」  その目的とは比久羅間の生活を立ち行かなくさせることだった?  いったい、何の意味があって? 「そもそも環境アセスメントは何のために行われた……?」  公民館をぐるりと見回してみる。村に関する蔵書は割とあるが、環境アセスメントについて記されているものは颯太が見付けた写真以外にない。  どこか別の場所に隠されているのか……? 「犯人はなぜ伝助さんを殺す必要があった……?」  溝内が取材相手を殺すことなど有り得るだろうか。殺してしまっては、比久羅間の闇など解明されないのではないだろうか。動機は……? まさか七不思議の内容に沿った見立て殺人を行うこと?  いや、それは矛盾する。七不思議の作成者とその体験者である溝内は別人でなければならない。
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