第1章

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男性はもうすぐあの世に行こうとしていた。彼がいるところはホームレスのたまり場なのかもしれない。そこら中にいるのは身分も性別もわからない人たちばかりであった。 「・・・・・・・・・・もうすぐ私の人生も終わりなのか」と独り言のように彼は言っていた。彼にとって人生とは何だったのか?そう考えながら毎日これまで自問自答していた。 彼は結婚もせずに普通のサラリーマンだった。がしかしある日を境にリストラされ、今に至った。彼にとっては突然のことだったのだろう。しかし彼は何とかしようと毎日毎日ハローワークに通った。が、結果はすべて不採用。彼にはこれといった特別なスキルもなかった。そして、彼はそのまま社会のレールから外れて今に至った。 私の人生はなぜこのようなことになったのか?この世界はほんとに怖いものだ・・・・・・ほんとに怖いものだ。彼はそれこそ社会の怖さをとことん知らされた30年間であった。そしてもう一つはこれほど年齢=年を取ることが怖いものだとは思いもよらなかった。 自分が年を取っていくのはだれしもわかっていた。が、それはあくまでそのままの意味だった。確かに人は年を取る。が、ここまで年を取ることがすべてを無くしていくものだとは思いもよらなかった。そう、年齢はまさに命=情熱も青春も勇気。すべてなのであった。 だからこそ彼は人生は年を取ればとるほどやれることが減っていくことに40を超えて、いや、リストラされて初めて知ったのである。 今にして思えば、彼が夢を見ていたのはいつなのか?そして社会のレールに乗ることがどれだけ安泰だという幻想を抱いていたのかはわからない。だが、わかっていたのは年を取ることはまさに恐怖でしかなかった。だからこそ彼はこのまま70を超え、そしてホームレスで死んでいくのかもしれない。そう、年齢ほど怖いものはないのだから。
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