第1章

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 いつもより一本早いバスの中もくまなく探した。昨日の帰りに乗ったバスじゃないかも……。ほぼ寝てたからどんな広告貼ってあったとか、全然覚えてない。バス停から学校までの道のりも、アスファルトの隙間に目を配る。ねーニャンコ、私の旦那知らない? ニャー、じゃわかんないよ。あ、待ってー。 「美穂、おはよ。ケータイ、見つかった?」 「んー、まだ。やっぱガッコかも」 「そか。教室急ご」  さすが我が友有沙、私とスマザエモンのために早めに学校来てくれるとは! 言ってみたら「いつもこの時間だよ」と一蹴された。照れなくていーのよ。 「もー。美穂、スマホ無くすの何回目?」 「一回目」 「え、意外」  意外とは何だね有沙さん? この私が最愛のダーリンの存在を忘れるなんて、あるわけないじゃないかワハハハハ。  そうしてようやくたどり着いた教室の、一番後ろの窓際にキラリと光る液晶画面が目に止まった。誰ともかぶらない、黄緑と赤を基調としたチェックデザインのスマホカバー。間違いない。私のだ。私の、私のスマーホ・ラビュン・フォエバー大佐だ! 触ると瞬時に画面が起動する。待ち受けのワンコになごむ。 「ああああ殿下あああ生きてるうちに会えて良かったよおおお」  うわメールいっぱい、未読L○INEが50行きそう、ゲームの通知がたまりまくってる……。画面右上に目がいった。2%。  瀕死じゃないか! すぐに人工呼吸と心臓マッサージ……じゃなかった栄養補給だそら急げ!  鞄をさぐり、……もう一度探り、中身を全部だして鞄をひっくり返す。  ……。うん。  鞄に全部戻して席に着く。担任がホームルームを始めるのを眺めながら、電池切れの警告音を出そうとするスマぴっぴをそっとオフにした。  充電器、どこ行ったかなあ……。
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