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「まあ、もしかしたら家にあるかもだし。帰ってから何したか思いだして、うっかり置いてそうなところでも探してみたら」
「だね。ありがと有沙。また明日」
「見つかるといいね。また明日―」
弟にケータイを返して、さっそくリビングへ行く。ガラッ、と冷凍庫を開けるがもちろん入っていない。
「……何してんだ、ねーちゃん」
「有沙にさー、帰ってからしたことトレースしていったら見つかるかもって言われてー」
棒アイスを食べるジェスチャーに弟の目つきが鋭くなる。
「……ねーちゃん、俺が買っといたガリ○リ君食ったろ」
「え? あれ優斗のだった? 何かあったから頂いたけど。名前書いといてよ」
「書いた。前にも食われたから。罰として、今度ダッツ買ってこい」
買うもんか。アタリ棒で十分だ。
続いてタンスを掘り返し、テレビの裏を覗き込み、床に這いつくばって本棚の下を探す。ゴミ箱を漁り電子レンジをパカッ。洗濯機をパコッ。風呂場にガラッ。そんなとこにあるかっ! と弟のチョップがドゴッ。家庭内暴力だ。助けてスマ王子。
後思いつくのは、トイレ。ペーパーホルダーの上にも棚にも見当たらない。トイレの花子さんに見かけなかったか聞いてみたかったが呼んでも出て来なかった。残念。もう寝てるのかもしれない。
今更スマってぃーの中身が気になってきた。やばいよ、L○NE全部無視状態だよ、週末のカラオケのことでメール入ってるはずだし。げ。キノコ枯れる……!生きててナマコ……あれ、ナマコってキノコだったっけ。
再び引き出しやら棚やら洗濯機やら開けていたら寝なさいと親に怒られた。敬愛するスマ閣下が消息不明なのに寝ていられるか! 仕方ない、ベッドの中で捜索作戦会議だ! スヤァ……
不覚。いつの間にやら朝である。いつもの執事、スマート・フォーン・ラビンに代わり目覚まし時計がジンジリと無作法な騒音をまき散らしている。ええい黙れ目覚まし時計。わらわはまだ寝たいのじゃ。
ボサボサの頭を適当に手で梳いて、あたふたと制服に着替える。ママンが準備してくれた朝ご飯をちょっとつまんで、鞄を探って、あ、そっか今居ないんだったスマホン伯爵。学校にいるかもしれないので早くお迎えにあがらねば! パンを牛乳で流し込んで家を飛び出す。
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