第1章

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またある日のこと、健一が早く帰宅して、エレベーターに乗ろうとして待っていると、エレベーターが開いたところ、中に隣室の男性が立っていた。そこは1階なので上から降りて来たなら降りるはずだった。 健一は気味が悪いので一瞬躊躇したが、我慢してエレベーターに乗った。 健一は男性に背中を向けて立っていたが、背中に汗をかく恐怖をあじわった。 男性はブツブツ何かを言っている。 ちくしょう!どうしたらいい…おんもらき…一羽が二羽になる…ちくしょう!どうしたらいい…一羽が二羽になる…おんもらき… 男性はそう独り言を言っているのだった。健一は3階に上がるまでの時間をものすごく長い時間のように感じた。3階に着いて、健一はエレベーターを降りたが、男性はまだブツブツ言いながら降りようとはしなかった。 エレベーターの扉が閉まった時には、健一の背中は汗でびっしょり濡れていた。 健一は男性が同居の女性を殺してベランダの冷凍庫に入れているのではないか?と疑った。 ある日、1階の管理人室に行ってみた。 「すみません。」 声をかけると、奥から管理人のおじさんが出て来た。 「あ、302号室の佐々木さんね!何か用?」 「実は、301号室の方なんですが、一緒に同居していた女性はマンションを出ていかれたんでしょうか?」 管理人のおじさんは首を傾げていたが、 「引っ越した報告も無いけどね…あの葉室さん、葉室さんて言うんだけどね、彼…困るんだよね~問題ばかり起こして!この前も上の階の鈴木さんがうるさいと言ってドアをずっと叩き続けてね!頭がおかしいんだよ。本当はマンションから出て行って欲しいんだけどね~」 そう言う答えだった。健一は警察に相談したかったが、何も証拠が無いのに逆に人権侵害で訴えられかねなかった。 それから間もなく、戦慄する事件がマンションの周囲で頻発することになった。 頭の無い猫の死骸がいくつも発見されるようになったのだ。どれも鋭利な刃物で斬り取られていた。 健一は隣室の葉室という男性が犯人だと思ったが、やはり証拠が無い以上はどうすることもできなかった。 ある晩遅く、健一の部屋のドアを叩く者があった。健一は、こんな時間に誰だろうと思い、ドアスコープを覗いた。すると、ドアの外からもドアスコープを覗く目があった。健一は驚くというより恐怖を感じた。 健一がとまどい黙っていると、また、ドアを叩いた。 健一は、おそるおそる尋ねた。
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