運命

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 気持ちのいい暖かい日曜の朝だった。  自宅の居間で新聞を放り投げ、熊のようにドスドスと足音をたてて、妻の目の前を行ったり来たりしていた。 「あなた。そんな占いなんて信じなくてもいいんじゃない?いくらテレビに出たからといって、相手はたかが人間よ」  妻の一言で私はホッと胸を撫で下ろした。 「確かにそうだ!」  私はそう叫ぶと、いつものジョギングをするために玄関へ向かった。  家から近い雑木林の間をジョギング中。    いきなり胸の痛みに顔をしかめた。 「な!?」  私はすぐさま胸の痛みに怯えながら息を切らして家に向かった。 「あなた。どうしたの?」  玄関で妻がヨレヨレになった私を見て驚いた。 「専属の医者を早く呼んでくれ! あいつには月800万も支払っているのだ!」  妻は血相変えて玄関にあるコードレス電話で、医者を呼んだ。  数分もしないで、駆け付けた医者はソファに倒れた私を診察して、重い口を開いた。 「肺炎ですね」 「何!? 薬は!?」   「今のあなたは新型インフルエンザウイルスと肺炎の合併症を患ってしまいました。薬はもう必要ありません。どうか安静にしていてください」  私は悟った。 高田の言う通りに、専属の医者に月800万円。トレーニングジムやサウナを1000万円で建設し、健康食に毎月10万円も使っていた。  真っ青になった私は妻に銀行通帳を見せてもらうと、預金残高は0円。若手の社員たちは、私を置いて勢いのある人物を社長にしていた。 「運命には逆らえない! 私の負けだ!」  私は叫ぶと静かに目を閉じて、 「今まで努力した分だけ。……気持ちがいいな…………やるだけやったんだ」  私はなくしてしまった。大事なものを。しかし満足をしていた。
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