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彼女は僕の少し前、友達と話しながら信号が変わるのを待っている。
僕は僕で、隣にはさっきは居なかったはずの友人が立っていた。
彼女から僕のピースが無くなると、周りの人からもそれぞれの情報が無くなってしまう。
彼女の友達も家族も僕の事を知らないし、逆もまた同じだ。
混乱させないためにも、その方がいいとも思うけれどやっぱり少し寂しく感じる。
僕が彼女の事を誰にも話せず、ただただ見つめるだけの日々がまた訪れた。
いっそ出会わないままだったら、もし次にああなった時に僕のピースで悩む事が無くなるのに。
そう思いながらも、ねえ気づいてと視線に込めるのを止めることが出来ない。
青に変わった信号を無事に渡りきった彼女を見届けて、彼女とは逆の方へと歩を進める。
彼女を家の近くまで送らないなら、二人はここで別れる。
偶然にも友人も同じ方向だから、手を振って、彼ではなく彼女の後ろ姿を見ながら祈る。振り向け、と。
そのまま見えなくなるまでずっと、僕は彼女を見つめ続けた。
いつかまた、この視線に気が付くその時まで、僕を知らずに君は生きる。
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