第1章

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彼女は僕の少し前、友達と話しながら信号が変わるのを待っている。 僕は僕で、隣にはさっきは居なかったはずの友人が立っていた。 彼女から僕のピースが無くなると、周りの人からもそれぞれの情報が無くなってしまう。 彼女の友達も家族も僕の事を知らないし、逆もまた同じだ。 混乱させないためにも、その方がいいとも思うけれどやっぱり少し寂しく感じる。 僕が彼女の事を誰にも話せず、ただただ見つめるだけの日々がまた訪れた。 いっそ出会わないままだったら、もし次にああなった時に僕のピースで悩む事が無くなるのに。 そう思いながらも、ねえ気づいてと視線に込めるのを止めることが出来ない。 青に変わった信号を無事に渡りきった彼女を見届けて、彼女とは逆の方へと歩を進める。 彼女を家の近くまで送らないなら、二人はここで別れる。 偶然にも友人も同じ方向だから、手を振って、彼ではなく彼女の後ろ姿を見ながら祈る。振り向け、と。 そのまま見えなくなるまでずっと、僕は彼女を見つめ続けた。 いつかまた、この視線に気が付くその時まで、僕を知らずに君は生きる。
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