第1章

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――僕は彼女の事なら何でも知っている。 誰かと並んで歩く時、右側に立ちたがる。 コンビニに入ったらまず雑誌コーナーを見る。 風が吹いて髪が乱れたら、右側の髪を耳にかける癖がある。 アイスはチョコチップかクッキー&クリームかで悩む。 手持ちぶさたの時は、こっそり指先だけを小さく動かして一人じゃんけんをして暇をつぶす。 いつもと変わらない様子にホッとしながら、こっちはこっちで誰も見てない気にしていないフリで友達と話す。 彼女は僕の事を何一つ知らない。僕と彼女は、ただ同じ町に住んでいるだけの赤の他人だ。
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