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「あの、前に会った事あったっけ?」
いつものように彼女を見ていると、ふいに視線が絡んだ。
見つめあったまま3秒間、彼女は僕へ近づいてきて首を傾げながらそう尋ねた。
「…………いや、」
首を振って僕は否定する。
彼女は僕の事なんて知らない。そのはずなんだ。
そっか、と呟いた彼女は僕に手を振り、
「バイバイ」
ニコッと笑って友達の元へと戻っていった。
……気が付かれてしまった。
一度僕の視線に気が付いた彼女は、向けられるそれに敏感になる。
交差点ですれ違うたび。お店のガラス越しに向かい合ったら。車道を挟んで並んで歩いていたら。
そんな所で目が合うたびに、彼女は笑って小さく手を振る。いつもそうだ。
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