第1章

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何を優先させるべきか。 近くにあるものから手に取りつつも、それがはまる場所を探さなければいけない。 だからとにかく全部と言うのは無理。 僕の事なら、また明日おはようって言えばいい。 そう思って初めて自分を諦めたのは、小学生の時の事だった。 隣のクラスの友達だった彼女とは、知らない仲になってもあんまり困らないし、すぐに仲良くもなれた。 僕が少し、我慢をすればいいだけだから。 今よりもピースの数は少なかったけれど、あの頃は今よりも要領を掴めていなかった。 だから彼女にいくつか無くさせてしまったし、解っていてもそんな彼女に戸惑いもあった。 けれど何度か、どうしてこうなるのか、これは救いなのかも解らないまま繰り返していく内に、慣れてしまった。 最近大好きになった本はまた読む事が出来るし、僕の事だってまた好きになってくれるに決まってる。 そう信じて、彼女への影響が小さなものと一緒に僕のピースを後回しにする事に。 流れるメロディの音量が上がり、終わりが近い事を告げてくる。 出来る限り、今を残せるように、ギリギリまでピースと、合う場所を探し続ける。 あと二つ。埋めることが出来たら、今度は僕を。 もしかしたら今回は入れられるかもしれない。そう思うと同時に音楽は止み、辺りにはガヤガヤと街の音が戻った。 ――僕はまた、彼女の中から僕をなくしてしまった。
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