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「あ、なっちゃん!おはようです」
「……おはよ」
翌日、那月は早目に登校したつもりだったのたが、既に隣の席にいた華乃に可愛らしい笑顔で挨拶される。
――あぁ。可愛いな。
那月は素直に思った。
でもこの笑顔を空に向けて欲しくない。
そんな勝手な、わがまま。
これも同時に押し寄せてくる。
華乃とは、仲良くしたい。
華乃のことは嫌いじゃないし、むしろ好きだ。自分といることを望んでくれているのがわかるし、それに応えたい。
だけど華乃に空を取られるのは嫌で自分から遠ざけたい。
そんな感情も湧き上がって。
那月は一晩中どうしたらいいか、どうすれば良いのだろうか。頭を悩ませていたが、未だ答えは出せずにいた。
「……なっちゃん?具合でも悪いの?」
元気のなさそうな那月の顔をのぞき込み心配そうに声をかけた華乃の声で我に帰った那月は、慌てて「大丈夫だよ」と答え自分の席に着き華乃と雑談を始める。
今、那月に出来る最善の事は、昨日の様に振る舞う事しかなかったからだ。
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