第3章 磯の記憶

2/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
その夜、私は夢を見た。城ケ島の磯に立っていて、波が四方から押し寄せてくる夢だ。いつの間にか私は小さな子供に戻っていて泣いていた。そして泣きながら、じっとこちらをみつめる視線に気がついた。視線の先には、展望台に居合わせた見知らぬ男性がいた。夢というものは目が覚めた瞬間はよく覚えていても、しばらくたつと溶けるように曖昧になっていくのが常だ。今朝見た夢をお昼頃まで覚えているということはほとんどない。ところが、その夢に限っては思い出せば思い出すほど鮮明となり、実際にそんな記憶があったような気がしてならなかった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加