#3 マイ・フェア・レディ

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(9)  幸生が桜からLINEメッセージを受け取ったのは、深夜も遅くなってからだった。ちょうど宿題もひと区切りついて、就寝して間もなくスマホの着信を告げるバイブが震えた。  思わず幸生は吃驚して飛び起きてしまった。  何ごとかと急いでスマホの画面をスワイプする。  だが、桜からのメッセージは、他愛もないものだった。 「しょうがないなあ」  そう独り言ちながら、幸生はこうして桜にかまってもらいたがられることのこそばゆさを感じた。 ――マンガのタイトルなんて、何もいま送ってくることでもないだろうに。  スマホの画面に表示されたテキストをしげしげと眺めながら、幸生は苦笑した。  暫しの間の後、幸生は画面上でせわしなく指を動かし、「送信」ボタンをクリックすると、スマホを枕元に置き眼を閉じた。 “変わった題名だね。  でも 桜が薦めるなら、探してみる”
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