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「なんでそのことが分かったの?敵が誰かまだ分からないのに」
あたしが不安を押し殺して尋ねると、匠はポケットからくしゃくしゃの紙切れを出してあたしに見せた。
「系斗が、俺のフリをして、歩き回った。背格好が似てるから、一見遠くから見ると、見間違う。で、案の定狙われたんだ。狙撃。誘拐未遂…。もちろん系斗のことだ。計算してるし、そんな簡単にやられない。かすり傷一つないけどな」
胸が締め付けられそうだ。
「今ハワイに戻っても、危険を持ち帰るようなものね」
「そうだ」
匠が持っていたそのくしゃくしゃの紙は、替え玉の系斗を狙う狙撃者の写真だった。ぼやけているし、顔を黒いマスクでほぼ覆っているから、どんな顔なのかは分からない。体つきから、青年くらいだろう。
系斗は、いつも無傷だけど、よくこんな写真撮らせてたなぁ。もしくは、わざと?
ほんと、匠も系斗も、怖いもの知らずだよね。
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