第9章 3人の瑠生と2人の匠

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あたしが真剣に言うと、彩乃はさらに目を大きく見開いて驚いた。 「で、今回は結束バンドよ。これには参ったわ。切るしかなくて。靴にカミソリの刃だけ用意してたけど…。変な話、銃で撃たれなければ、死んでたかもしれないわね」 あたしが思い出しながら言うと、カイと匠は顔を見合わせて眉をしかめている。彩乃は身を乗り出して、 「なんで?」 と不思議そうに尋ねると、口を挟んだのは、匠だ。 「至近距離で撃たれて、瑠生はもう逃げられないって思ったんだと思うよ。あんな怪我で普通の人なら逃げようとするわけがない。逃げられない。そう思い込んで、ルシアは瑠生の手のバンドだけは外したんだろう。ジタバタするのが見たいドSヤロウだからな。普通の人なら、そこで即死か、バテてる。だが、瑠生はわざと咄嗟に急所を外すよう、撃たれたんだろ?」 「正解!」 匠の言葉に、あたしはまたニコッと笑ってみせた。
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