第1章 戦火の中の恋人

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香織さんが言うと、あたしは一瞬泣きたくなったけれど、ギュッと携帯を握りしめて、 「行くわよ。匠を迎えに行くわ。もう、黙って待つなんてこと、出来ない!限界デス!」 と言うと、香織さんの溜息が電話越しに聞こえてきた。 「じゃ、系斗が同行します。危険が及ぶ可能性があるから。あなたがコロンビアに行くってことは、匠さんが生きている可能性を示してしまう。あと、追跡を避けるためにも、コロンビアに直行せず3回くらい乗り換えて。その度に裏を取られない偽名を用意するわ。本当は、…あなたを行かせたくない。でも、こうなったら、瑠生は行くんでしょ?」 香織さんとはそんなに会っていないはずなのに、何故か見破られている。 「うん。匠を、迎えに行くの!」 「あの時みたいね。カルテロに瑠生が拉致られた事件…。アメリカも日本も、匠を受け入れないと言われて、アメリカの公安の面々の前で、裸になって傷跡を見せて、処分を撤回するように説得してたあのとき」
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