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「ーーな、しかし、
坂州の殿には既に正妻があり
側室も大勢いいらっしゃると聞きます。
なぜ姫ほどの御身分の方がそんな」
「その正妻が、お亡くなりになったそうよ……
その後に私をとたってのお望みだとか」
「そう、でしたか……」
昔一度だけ見た坂州の殿は、
まだほんの子供だった私を
舐めるような目つきで見るような
異常な心を持つ人だった
幼心に感じた
得体の知れない恐怖心……
若い生娘しか
相手にしない殿は
方々から若い娘を集めては
一夜の情けをかけ、
あとはなしのつぶての
鬼の様な方だという噂を、
知らぬものはいない――。
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