あなたと恋に落ちるまで

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昼は何を食うかな。最近はコンビニ弁当を買って車内で食べることが多かったから今日は店に入るか。 高級住宅地や有名私立大学が近いこのオフィス街は早峰フーズのある古明橋の隣に位置し、セレブの街というイメージが強い。その中で一際浮いている牛丼チェーン店の列の最後尾に並んだ。 「あれ、椎名さん?」 女に声をかけられた。見ると横に立っていたのは早峰フーズの宇佐見だった。 「ああ、どうも……」 「こんにちは」 宇佐見は高い声でニコニコと俺の傍に寄ってきた。昼休みだというのに面倒くさいことになった。 「今からお昼ですか?」 「はい……」 「私もなんです。よければご一緒しませんか?」 「ここ牛丼屋ですけど」 カフェでランチしてそうな女と入る所じゃない。実際列に並んでいるのはサラリーマンばかりだ。ここならオシャレな店は他にもたくさんあるだろうに。 「大丈夫です。私がっつりなの好きなんで」 こっちが大丈夫じゃねぇよ。空気読めよ。 俺の都合はお構いなしに宇佐見は隣に当たり前のように一緒に並ぶ。 「俺食うの早いですけど」 「あ、はい。大丈夫です」 遠回しな拒絶もこの女には通じない。 そうですか。なら適当に付き合ってやるよ。 テーブル席に通されると当然のように俺の向かいに座り、特盛に味噌汁とサラダをつけたセットを頼む俺に対して宇佐見は並盛だけを頼んだ。 「椎名さんはこの辺も担当なんですね」 「ここと古明橋と時々イベントの作業もやります」 「へー。次はいつうちの会社に来ますか?」 「まだ未定ですけど近いうちに」 宇佐見は俺の顔を見て始終笑顔を見せる。 寝不足の頭にわざとらしい高い声がガンガン響く。 以前の俺ならこんな女は適当にあしらっていたけれど、今は存在が心底煩わしくて仕方がない。
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