あなたと恋に落ちるまで

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「どうして別れたんですか?」 突っ込んだ質問をしてみた。宇佐見と横山の恋愛に興味があったわけではないが、横山がこの女と別れた後にどうして夏帆と付き合ったのかに興味があった。 「実は……私が横山を振ったんですよ。なんか価値観が違うっていうか、もしも結婚したら会社を辞めてほしいって言われて。まだ結婚の具体的な話もないのに重たいと思いません? 仕事も辞めたくないのに」 宇佐見は食べるのをやめて横山の話に食いついた。 「一緒に住んでたんですけど、共働きなのに家事は私がやるみたいな空気になって、辛くなったから別れちゃいました。同じ仕事をしてて全部私がやるなんておかしいですよ」 「まあそうですね……」 「不規則な仕事なのにお弁当まで作るなんて無理」 宇佐見はだんだん愚痴っぽくなってきていた。 そうか、だから料理のできる夏帆に嫉妬しているのかもしれない。 「宇佐見さん家事苦手なんですか?」 「いいえ! そんなことはないですよ! 時間があれば料理だってします!」 俺の指摘に宇佐見は焦って完全に箸が止まっている。必死に弁明し、俺に良いイメージを植え付けようとしているようだ。 「横山のお母様が専業主婦だったそうで、お母様と同じように女性に理想を高く持っていました」 なるほど、別れる理由としては理解できる。振られる前に宇佐見から別れを切り出した。横山の理想になれない女になる前に。 「誰にでもいい顔をするのに、生活面ではだらしがなかったんです。私がやらなきゃ掃除もしないし。でも全部私がやるなんて無理ですよ」 話が途切れたと同時に俺は食べ終わった。宇佐見は器にまだ半分以上残っている。
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