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話を判りやすく纏める時間も技能もなく、無駄に詳細に、冗長に熱く語った俺の台詞に返された葛城の返事は簡潔だった。
「すぐ警察だ」
簡潔すぎて、にわかに意味が理解できない。
しかし、そんな俺の混乱などそっちのけで、葛城は極めて冷静に言葉を連ねていく。
「今そこで電話するんだ。その人が錯乱状態だったから落ち着かせるために言うことを聞いて同乗させたって言うんだぞ」
「え、でも。だって、イヤだって言って」
「アホかっ。誘拐だって騒がれたらお前、言い訳できねーぞっ」
「え、だって、本人が」
「うがーっ!! もーっ!! 良いからすぐ警察に電話しろっ!!」
「いや、そんな」
「そんなじゃねーんだよっ! 彼女に暴力ふるってた当人が捜索願い出さないとは限らないだろ?! 激しい暴力を日常的に振るっていた人間が迎えに来た時、彼女が正常でいられると思うのか?! むしろそれ求める方が酷だろ?!
虐待やDVじゃないかと思うとか何とか言えば、警察だってそれなりに対処してくれる。安心してっ!、今スグにっ!、通報しろっ!!」
叫ぶだけ叫んだ葛城は、俺の返事を聞かぬまま、通話を切ってしまった。
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