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「帰省中ごめんね~っ」
イライラするほど呑気な涼香の声。
「いーよ。で? 何?」
「え? いや。えっと。……久し振りの実家、どうかなと思って」
特に用事はないらしい。
面倒臭いことこの上なく、それどころでない状況も俺を後押しして、適当にはぐらかして電話を切ろうと口を開けかける。
しかし。
考えてみたら、何で誤魔化す必要があるのかと、沸々と腹が立ってきた。
悪いことなど何もしていない。俺が嘘を吐かねばならぬ状況など欠片もないのだ。
それに、その証人を増やす意味でも、涼香に状況を説明しておくことはとても重要に思えた。
葛城同様に逐一説明した結果。
「ばっかじゃないのッ! 早く警察届けなよッ!」
耳元で大音量を炸裂されてしまった。
涼香は同級生の俺に対して遠慮などないし、元々強烈に気が強い。葛城の反応がアレだった以上予想できた流れだった筈だ。
今更ビビっている自分が情けない。
「これから連絡するんだよ……」
『これから勉強しようと思ってた』的な小学生レベルの言い訳だと自覚しつつ、その程度のセリフしか出てこない。
更に輪を掛けてギャンギャン喚く涼香に辟易し始めたところで、車の中で動く影に気が付いた。
通話を切りながら運転席に戻る。
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