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ゆっくりと滑らかな動きを心掛けながら、驚かせないよう後部座席に視線を向ける。
女の子は、既に上体を起こし座っていた。
落ち着いて観察すると、本当に酷い顔だ。痛々しいを越えて気持ち悪い域に達している……という表現は反感を買うだろうが。
ただ、ちらっとそう思った俺でさえ、
「あの」
と、遠慮がちに掛けてくる声にキュンとしてしまった。
怯えたように震えている潤んだ瞳、可憐で乙女な細い声音、恐怖に堪えようと力を振り絞り、強張り続ける華奢な体躯。
そんな様子を介して見る醜い外観はその凄まじさ故にむしろ悪目立ちせず、逆にいじらしい愛らしさがより匂い立っている気がする。
「おはよ。えっと。俺の事、判る?」
俺の問いに、コクンと頷く彼女。
カワイイ。
「体はどう?」
少し視線を下げて、
「痛い、デス」
と呟くのも、カワイイ。
「ここね、俺が通ってる大学の附属病院なんだ。君がいた場所から、随分離れた処にある病院だよ」
俺ができる最大限の優しさでコーティングした声を、真剣に聞き入る彼女。
不安だろうに、精一杯俺を受け止めようとしているのか、大きな黒目は射すように俺を見つめていた。
「君にとって、診察を受けることは、2つの意味があるんだ」
俺もその彼女の態度に応えられるよう、向き直って正面から視線をぶつける。
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