1、修介

2/2
前へ
/23ページ
次へ
 「だれかぁっっ」と、聞こえた気がした。  外からの声だ。  俺はちょうど顔を洗った直後で、Tシャツを着ていなかった。  結構な緊迫感を放つ口調が気になりつつも、何だ?と思うに留まっていた俺の目の前で。  ベランダの向こう側を、女の子が、落ちていった。  恐ろしく歪んだ表情に張り付いた目は、しっかり此方を向いていて、その視線が、俺と重なった。  その一瞬、時が止まって。  俺と、見つめ合って。    落ちていった。  「助けて」と言っていたな、と気がついたのは、その後だった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加