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目覚めから最悪だ。
およそ毎回この夢で起こされる。
勘弁してほしい。
もう、いい加減解放されたかった。
いや、俺を縛っているのが俺自身だと、俺にも判っていた。俺が、忘れられないのだ。
俺が、俺を許せないのだ。
彼女に会ったのは、偶然だった。
久し振りに実家に帰るつもりで車を走らせた夕暮れ時。不意に視線を向けた先にいた。
田んぼの畦道の端で、隠れるように顔を隠しながら体育座りしていた、不自然な様子の女の子だった。
俺より少し年下だろうか。
「大丈夫ですか」
車を降りて声をかける俺のセリフに被せる形で叫び声を上げた彼女は、両腕で頭を抱え、小さな体を更に小さく縮こませた。
「えっ、ちょっ、あのっ」
不測の事態に振り回され過ぎる俺。自分でも情けない。
「えっと、どうしたんですか」
泥と草ににまみれながら小さく丸まる女の子の傍で、その子に触れることもできずひたすらオロオロし続ける。
そんな中、ふっと彼女が顔を上げ、こちらを向いた。
青く腫れ上がったまぶたの奥から、弱々しい視線が送られてくる。
「誰?……誰でも……助けて」
掠れた声を震わせながら小さく呟いた彼女の唇は、声以上に震えていた。
普段から、そう軽薄な生き方をしているつもりはないのだが。
心身ともに痛々しい様子の女の子に心が動かされる程度には人情家だったらしい自分に、少し安心した。
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