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そして、その男が誰なのかを知り、麻里音は慌てて顔を離した。
「昴さん……」
麻里音は口に手を当てて茫然とした。
昴は今度始まるドラマの共演者だ。役柄から昴と撮影が被ることが少なく、何回か顔合わせをした程度だが昴の顔は覚えている。
「麻里音! 聞こえているか? これは撮影なんだ。年末特番のドッキリ企画なんだよ! 早く開けろ! 早くここを開けてくれ……」
マネージャーの悲痛な声が楽屋にこだました。
糸が切れたように座り込んだ麻里音は、楽屋の中をぐるりと見回す。
死角にならず、楽屋全体が見えるであろう位置には、丸い時計があった。
その丸い時計越し、撮影映像の届くスタジオの機器には、茫然とする麻里音の姿が映っていた。
end
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