いえない

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「葉ー、いるかー?」  階下から響く声と共に、階段を駆け上がってくる足音。  勝手知ったる友の家。  勢いよくドアを開けたのは、もうひとりの幼なじみの淳平だった。 「あれ?どうしたの?ふたりして」  ただならぬ雰囲気でも漂っていたのだろうか。  淳平は向かい合わせで座っていたふたりを交互に見比べて、首を傾げた。 「いや、べつに」  真吾が苦笑しながらそう答えると、淳平は持ってきたポップコーンを口に放り込みながら、にやりと笑った。 「もしかして、オレお邪魔だった?」 「は?」  なにが?と、首を傾げると、淳平はまたもやふたりの顔を見比べて意味深な笑みをつくった。  ちらりと横を見ると、自分と同じように真吾も首を傾げている。 「だってさ~ラブラブなふたりの間に入ったら、オレって邪魔者じゃん?」 「はあ!?」  声を上げたのはほぼ同時。  たぶん、自分も真吾もとてつもなくマヌケな顔をしていると思う。  淳平はふたりの驚きように一瞬きょとんとしたあと、再びにこりと笑った。 「葉は真吾のコト好きだし、真吾も葉のコト好きじゃん?これってラブラブだろ?」  あっけらかんといわれたセリフに、開いた口が塞がらない。  誰が誰を好きだって?  おもわず真吾を見ると、同じく驚きを隠せないような表情の真吾と眼があった。  瞬間、真吾の顔がカッと赤くなったのを見逃すはずがない。  といっても、たぶん赤くなったのは自分も同じで・・・・。  見つめあっているというより、眼が離せないこの状況。  淳平がいったことが本当だとしたら・・・・。  真吾も自分のことを好きだということで。  ということは、いわゆる両想いなワケで。  本当に、本当?  そう思っているのは、たぶん真吾も同じなんだろう。  探るような眼つきで、何度も瞬きを繰り返している。  いいたくてもいえない。  言葉を失うというのは、こういうことをいうのかもしれない。  思うように、身体が動かない。
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