11人が本棚に入れています
本棚に追加
地上に位置する指令室よりも地下に位置する基地内部は普段から戦闘員でない非戦闘員も暮らしているので、蟻の巣のように張り巡らされていた。普段の基地内部はあらゆる場所で人とすれ違うがこの時ばかりは誰とも出くわさなかった。
「尾長副務官。非戦闘員はどちらに?」
設楽は前を歩く尾長副務官に声をかけた。
「福井国侵略を知らせてきたのは山中だ。非戦闘員は山中先導の元、先に安地へと向かわせてある。」
「そうですか。良かった。山中のおっさんが…皆とはネームOで会えるんですね。良かった。」
設楽はほっと胸を撫で下ろした。
設楽は幼い頃から山中に育てられており、度々任務で長期不在になる山中の代わりに幼馴染みである非戦闘員の凛(りん)の家にしばしば世話になることが多かった。
凛は設楽にとって大事な存在であり、体が病弱な凛を守りたい一心で設楽は戦闘員に志願した。
凛からするといつも危なっかしい設楽はほっておけない存在であり、設楽をいつも子供扱いにしていたので、設楽の戦闘員志願は心から心配だった。
設楽はポケットに忍ばせている凛からもらったお守りをギュッと握りしめた。
「ネームOはもう存在しない。我々が向かうのはネームMだ!」
尾長副務官の言葉にその場にいた全員が耳を疑った。先程の指令室でネームOと言ったのにもう無いとなると他の班はどうなるのか…。
「そ、そんな、他の班はどうなるんですか?」
設楽は尾長副務官に掴みかかった。
「設楽、諦めろ。頭は俺でもない。非戦闘員だ。俺達は全員胴体だ。」
そう言ったのは真田隊長だった。
確かに非戦闘員無くしてURARAの存続はあり得ない。
設楽は真田隊長の言葉に何も言い返せずただ他の班員のことを思うしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!