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「伊織はさ…ファザコンなんじゃないの?
真逆タイプのパパもお祖父様も肯定出来るなんて憧れが過ぎるでしょ」
「節操がない?(笑)
ファザコン‥‥かもしれないナ‥‥‥。
母親って実際に自分の身体で子を育み産み出すわけだから、体感としてあるよね…一心同体みたいなところが。
その点父親はさ…どう実感すればいいンだろう…。
切ないじゃないか‥‥男は…。
産まれた瞬間から孤独に生きることを運命づけられてる。
だからこそ愛おしい存在に思えるんだ。
父親が我が子に寄せる愛情なんて疑問だよ。
凜は凄く暁さんに愛されてるけど、
それは凜が暁さんの愛するひととの子どもだからということ。
俺の実の父のように、相手にたいした愛情もなく産ませた子に何の感情も懐かないってのは、至極あたりまえのような気がするんだ。
スキンシップや感情移入は圧倒的に母親に叶わないんだし。
愛を量れる方程式があったら教えて欲しいよ‥‥
触れてみなきゃ理解できないこともある…
触れ合わなきゃ‥何も伝わらない‥‥言葉だけじゃ‥足りない‥‥もっと奥まで‥‥‥」
「い‥伊織?
ゴメン…なんか僕‥伊織に酷いこと言った…。
ごめんね‥気に障ったンなら謝るよ!!
本当にごめんなさい!」
「えっ!?
あ、ヤ‥違うんだ!
凛は何も…俺の方こそゴメンゴメン、
コッチのコトなんで‥謝んないで!」
「だって‥パパがいないってこと‥伊織‥寂しいンじゃない‥?」
「寂しい?
う~ん‥‥ないんだなコレが‥‥
正直、何の感情もね。マジで。
多分、暁さんやお祖父様が父親以上に父親でいてくれたせいだと思う。
だからサ、どんな風に関わり合ったか…時間の濃さなんじゃないの、親子って☆
それなら凛は?ママがいなくて寂しい?」
「ううん、ちっとも。
天国のママには悪いけど、いっときだってそんなことは思ったことない。
伊織がいるもん♪」
「おおっ!そいつは恐縮デス…(笑)」
それからの僕達は、ドライブ中、ずっと僕が小さかった頃の思い出話でお喋りし通しだった。
夏祭りやプールや運動会、剣道の練習や試合、大掃除に初詣、親子遠足、キャンプに星の観察、数え上げればキリがない。
母の日には仏前にママへ白いカーネーションと伊織に赤いカーネーションを贈ったし、
母親学級にも伊織が来てくれることが自慢だった。
僕が余所の引っ越しのトラックに乗っかって行方不明になった話…
伊織の鞄にカブトムシをいっぱい詰め込んだこと‥‥
伊織の成人式に僕は失神してしまったこと‥
(羽織袴があんまり格好良すぎて‥)
七五三で御神酒を戴き、酔っ払った僕が素っ裸で神社を駆け回ったこと‥
授業参観の理科で伊織が大興奮して、先生より面白い授業をやっちゃったり(笑)
伊織は僕の全てをホームビデオのように克明に記憶してくれていた。
伊織の中には僕がいる!
僕の中は伊織でいっぱい!
ありがとう伊織
僕は世界で一番伊織が大好き!
これほど素晴らしいことが他にあるだろうか?
なのに…
僕はまだ、何かが足りないと感じている。
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