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「伊織君は陽子の分身なんだね(笑)」
「そう☆僕は陽子さんの手足。
でも、凛には直接会わせてあげたいナ。
こんなキュートな子、他にいないよっ♪
陽子さんもみんなに会いたいと思ってるよ‥きっと…」
「そのうち時間を作って、みんなでオランダに会いに行きましょう。
…但し、お爺さんだけが問題だけど…」
「僕、お祖父様はスゴくカッコイイと思います。日本の心を大切にしてるんだ。
風格があるっていうのかな…凄く魅力的なお爺ちゃまだと思うよ☆
陽子さんはどうしてお祖父様と上手くいかないんだろう?」
「ハハ‥父をリスペクトしてくれるのは光栄だけれど、程々にね…。
時代遅れも甚だしいんだ…。
数え年7歳の6月6日に【手習い始め】
女の子は日本舞踊・お琴・書道・茶道・華道…
男子の三歩下がって出しゃばらず。
男の子は、剣道、弓道、合気道、書に論語‥果ては古式泳法まで…
いったいいつの時代だか‥‥。
箸の上げ下げから立ち居振舞い歩き方…
男は男らしく堂々と、女は女らしくしとやかに‥‥‥息が詰まるよ…。
幸い、母‥君たちのお祖母さんが、父を上手く操縦してくれていたから僕等なんとか救われていたけど…
元々陽子と父とは事あるごとに衝突する間柄でしたから。
その上‥母の危篤に彼女の出産が重なってしまって…」
「‥‥僕が‥産まれたことが原因…」
「いやいや、違う!違う!
誤解しないで下さい!
母が倒れたのも出産も不可抗力ですし、
君の誕生は母の葬儀の参列者の誰もが大いに喜んだんですよ、
母の生まれ変わりかもしれないって‥‥父には内緒ですがね(笑)
勿論死んだお祖母さんも君に会うのをとても楽しみにしてましたから。
ただ‥せめて出産くらい里帰りさせてあげていれば、陽子も母を送り出すことができたんです…。
更に、彼女の再婚が駄目押しだった…。
父‥お祖父さんは君にとても心を痛めてました。日本人同士の夫婦の間で君が辛い思いをしてやしないかと。
可愛い初孫だもの‥
君に無関心でいられるワケありません‥」
「養父とはうまくいってました。だから元の父を思う必要もなかったんだ。
けど‥アイスバーンで運転を誤って‥‥‥‥
‥パパとは呼ばずじまいで‥‥‥。
でもね、ウン!それを聞いて安心した、やっぱりお祖父様は素敵な人なんだ☆
もしかして僕、嫌われてるンじゃないかしらってちょっと心配だったの‥」
「大丈夫(笑)
だいぶ偏屈ではあるけど、伊織君のことは凜と同じように可愛いはずですよ♪」
「お祖父様と陽子さん‥解り合えないのかな…」
「そんな日が来るといいのだけれど…。
当時の父の眼には、自分の娘が我が儘でふしだらにしか映ってなかったんでしょう。
今となっては二人して意地の張り合いで…、
ふたりは似た者同士だから、感情が拗れると厄介です…」
暁は寂しそうに苦笑した。
「いつか仲直りできるといいのにな‥‥。
お祖母様だってきっとそう思ってるよ。
あ‥‥凜ったら、いつの間にか寝ちゃってる(笑)」
「おやおや‥話し込んじゃいましたね、
ゴメンゴメン…そろそろ部屋へ戻るとしましょう。しっかり身体を休めて…。
今日は1日凛と部屋で仕事をしてますから、
何かあったら呼んで下さいね…」
伊織の部屋の障子が静かに閉じた。
(陽子さんの家族はみんないいひとたちだ。
陽子さんが帰りやすくなるように、みんなをがっかりさせないように、
先ずは僕が凜のお世話をしっかりしないとね‥‥ガンバるよ‥‥‥ママ‥‥‥‥)
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