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「おいおい、からかわないでくれよ。アンドロイドにうつ病の症状情報とうつ病の経験をインプットして、ある程度の心理学の知識と矛盾を生じない程度の記憶を付け加えただけだからな。上手くいったほうが怖い。それよりも、アンドロイドが人間として現代社会に送られると、ここまで人間らしい感情を持つのかと関心してしまった」
「そうですね。今回の臨床心理士のアンドロイド化も人間のような感情を持たない彼女らだからこそ、成功するかもしれないと言われて頼まれましたしね。私もそれについては気になります」
会話していた二人が私を見つめる。
「彼女はずっと自分のことを人間だと思っていたのでしょうか?」
「おそらく、そう思っていただろうな」
少し間をあけ、ゆっくりとした口調で男性は言った。
「彼女はどうしますか?」
「アンドロイドとしては欠陥品だから処分かな。面白い素材ではあったが」
「そうですか……。残念ですが、処分致しますね」
そう言うと、固定されていた私のベットは動き始めた。
どうやら、私は人間ではなく、アンドロイドらしい。
彼らが言っていることは、どこまで事実なのかわからない。でも、私が殺されることは紛れもない事実。
体を動かすことも、声を出すこともできない。
今は、ただただされるがままに動かされる。
「誰か助けて!」
私の言葉は、もう誰にも届かなかった。
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