あいつと喧嘩した理由

4/17
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 石田は「哀しい? 誰がぁ~っ?」とニヤニヤ顔。筧は体勢を整えながら「ハァ? お前がかぁ~」と茶化すようにおどけた。  女子の一人は「見捨てられたんだ~? 誰に~?」本気なのか冗談なのか分からず、一応はおれに聞き返す。それを無視すると、別の女子も続けて「幼馴染み…? って?」  おれはそれには答えない。次の瞬間にはみんなもう、おれの言葉の意味なんかどうでも良くなっていた。 「はいはい。加わった。加わった」  誰かがそう言うと、みんなが一斉に笑った。  なんだって良かった。深い意味は分かってなくても、おれの自虐ネタで笑ってくれたら、それで。  浮かれていた? かもしれない。少しくらいは。  早乙女はその時──。  どんな思いで何度も電話をかけ、気まずい仲で、名前も名乗らず親の対応を聞いたんだろう? おれがハシャイで遊んでいた、その時……。  そして、返事が来ないことを──どう思ってたんだろう?  でも、その時は違った。「あいつが携帯番号教えないから!」なんて、あいつのせいにしてたくらいだ。  結局電話は一度もせず、土日は一人で家にいた。腹が立っていた。あいつのせいで最終の二日をこんな風に過ごすハメになって。  学校が始まっても、おれは聞きにも行かなかった。  行けなかった……怖くて。  その前から既にぎくしゃくしていたから──本当は仲直りしたかった。  早乙女との仲は、そこで消滅した。  と、思っていた。  けど、まだ仲直りするチャンスはあった。  五月の半ば、廊下で早乙女とバッタリ会うまでは。  早乙女は一瞬よそよそしい態度を見せてから、おれの顔をチラッと見た。何か言いたげな顔になり、数秒後。  スッと視線を外した。  ショックだった。  女友達と喋る早乙女を見て「やっぱり消滅したんだ…」改めて確信した。  そして、本当にそれっきりになった。  自業自得。おれが早乙女を一番馬鹿にしていたこと──浮かれていたのは本当はおれの方だった。あいつは女子との約束も断り、おれを優先してくれてたのに。  あいつこそGWを…一人。どう過ごしたんだろう。  そうして、二年生になった。  おれには幼馴染みの友達が居た。早乙女だ。不甲斐ないおれのせいで、自ら仲を切ってしまった、親友だった奴……。  なのに、なんでだよ!
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!