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石田は「哀しい? 誰がぁ~っ?」とニヤニヤ顔。筧は体勢を整えながら「ハァ? お前がかぁ~」と茶化すようにおどけた。
女子の一人は「見捨てられたんだ~? 誰に~?」本気なのか冗談なのか分からず、一応はおれに聞き返す。それを無視すると、別の女子も続けて「幼馴染み…? って?」
おれはそれには答えない。次の瞬間にはみんなもう、おれの言葉の意味なんかどうでも良くなっていた。
「はいはい。加わった。加わった」
誰かがそう言うと、みんなが一斉に笑った。
なんだって良かった。深い意味は分かってなくても、おれの自虐ネタで笑ってくれたら、それで。
浮かれていた? かもしれない。少しくらいは。
早乙女はその時──。
どんな思いで何度も電話をかけ、気まずい仲で、名前も名乗らず親の対応を聞いたんだろう? おれがハシャイで遊んでいた、その時……。
そして、返事が来ないことを──どう思ってたんだろう?
でも、その時は違った。「あいつが携帯番号教えないから!」なんて、あいつのせいにしてたくらいだ。
結局電話は一度もせず、土日は一人で家にいた。腹が立っていた。あいつのせいで最終の二日をこんな風に過ごすハメになって。
学校が始まっても、おれは聞きにも行かなかった。
行けなかった……怖くて。
その前から既にぎくしゃくしていたから──本当は仲直りしたかった。
早乙女との仲は、そこで消滅した。
と、思っていた。
けど、まだ仲直りするチャンスはあった。
五月の半ば、廊下で早乙女とバッタリ会うまでは。
早乙女は一瞬よそよそしい態度を見せてから、おれの顔をチラッと見た。何か言いたげな顔になり、数秒後。
スッと視線を外した。
ショックだった。
女友達と喋る早乙女を見て「やっぱり消滅したんだ…」改めて確信した。
そして、本当にそれっきりになった。
自業自得。おれが早乙女を一番馬鹿にしていたこと──浮かれていたのは本当はおれの方だった。あいつは女子との約束も断り、おれを優先してくれてたのに。
あいつこそGWを…一人。どう過ごしたんだろう。
そうして、二年生になった。
おれには幼馴染みの友達が居た。早乙女だ。不甲斐ないおれのせいで、自ら仲を切ってしまった、親友だった奴……。
なのに、なんでだよ!
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