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咄嗟にあいつを見てしまった。
「大丈夫?」
違う。そんなつもりでお前を見たんじゃないのに。
「別に…」
先に教室を出たのはおれ。もう二度と階段なんかで、あいつの姿を覗いたりしない。
校庭に出ると、決められた席に誰も座っていなかった。先着順だ。みんな思い思いに好きな場所へ椅子を置いている。
うちの担任は、それに気づいても咎めない。運動会の自由な雰囲気がそれを許しているような空気があった。
「ここ、いいかな?」
おれたちは最後の二人だった。
「だって、そこしか、空いてないじゃん…」
おれは言った。
「ありがと…」
あいつはお礼を言った。
ただそれだけ……。
そして、それは起った。おれの一番の問題。
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