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私は生まれながらの寂しがり屋だったが、何をするにも酷く不器用であった。友達は一切居なければ、頼れるのは両親ぐらいであったと思っている。
そんな私が日々の不安を紛らすように書いていた作品が、何かの陰謀により賞を取ってしまったからさぁ大変な事になってしまった。
その後、電話で「一度会って話がしたい」などと勧誘されたから、さぁ大変。極度の人見知りな上に学生時代からの友達と呼べる人など、今となっては一切居ないような人間はどうしたら良いモノだろうか?
目の前に表れたのは身の丈6尺程の大柄な人物。
きっと私などとは違い、飲みに誘える友達や急にカラオケに誘っても一緒に行ってくれる知り合いが多数いるような人物に違いないだろう。
「重庵憂司(じゅうあんユウジ)先生ですよね?」
喫茶店などと洒落乙な場所に巧い事ノせられて来てしまった私がバカなのか、それとも言葉巧みに私をノせてしまったこの男の弁が立つのか。
私はこれまでに言いようも無い不安に苛まれていたのだった。
「私、こう言うモノです」と
言って差し出された名刺には
「安間恵治(あんまケイジ)」と書いてある。
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