第1章

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「いいえ、私どもは、貴社のフィンテックの取り組みを高く評価しております。さらに発展させていくにはもっと幅広くビックデータを活用すべきと判断し私どもで取締役を派遣してサポートさせていただければと考えました」 「冗談ではない。こういう言い方は失礼かも知れんが、どこの馬の骨ともわからぬ奴に経営に口を出してもらいたくない。大株主は尊重するが、経営には直接タッチするのは認められない」  藤井は苦笑しながら、「時間はありますから、ご検討ください。では、これで失礼いたします」と退室した。  佐藤は、緊急の役員会議を開き、佐藤は「15%もの株を集めたとあっては全く無視することもできないだろう。しかし、Fファンドの出方によっては、一戦を交えることにもなる。そのつもりでいてほしい。まず、Fファンドの真意がどこにあるのか探るのが必要だ」と提示した。  ただ腹の底では、まずFファンドにはゼロ回答でいい。TOBで市場から公開買付をしても、わが社はわれわれを支えてくれる安定株主も多い。まず40%にも達しないだろうと読んだいた。 しかし、佐藤のその思い込みは甘かった。  横浜地裁での攻防  3日後に記者を横浜金融の会議室に集め、佐藤社長は「Fファンドが、15%の株保有を根拠に役員派遣や経営計画革新を求めてきましたが、弊社としましては、そのような要求を認めるというわけにはいきません。どうしてもTOBをするということでしたら、敵対的買収とみなし、第三者新規割当て増資を行い、銀行や取引先等のご協力を仰ぎたいと考えております。そうすればFファンドさんの持ち株比率も下がるわけです」と発言。  ある記者が「しかし買収やM&A対策向けの新規第三者割り当て融資は、今までの判決では認められない傾向ですが…」と質問する。  「弊社では、この問題が起こる前から、社の約款で、割当て増資についての規定を設けておりますので、法的には何ら問題はなかろうかと存じます。しかし、Fファンドも紳士的ですし話し合いの場をもつことはやぶさかではありません」。佐藤社長は微笑みながら、答えた。  しかし、その余裕は1か月も持たなかった。
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