雪堂にて

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 そこに至って改めて周囲を観察すると、目が暗闇に慣れたのも手伝って、当初よりも随分色々な物が見える。  堂内は、古いと言っても隅々まで掃除の行き届いた、清潔で、且つ静謐な空間だ。振り返れば神棚もちゃんとある。無宗教の俺にはよく分からない、金色の装飾がなされた品々が、月光を受けて煌めいている。  自分の状況が掴めたことに安堵し、気づけば動悸は治まっていた。冷や汗は止まったものの、不快な感触がまだ残る。俺はシャツの裾で強くそれを拭う。  再び激痛。  この痛みはなんだ?  そして俺は、自分に何が起こったかをはっきりと自覚した。  俺は日が傾いた頃に暇を持て余して、この御堂に忍び入ったのだ。  この御堂の扉は重く厚い木でできていて、両開きだ。鍵は掛っていなくて、俺は扉を開けると今のように神棚を見ていた。  導かれるように堂内に入り、ただぼうっと神棚を眺めていると、俺は突然後頭部を殴られて気絶したのだ!  そうだった。  俺は寝ていたのではない。  昏倒していたのだ!  俺は閉じ込められたのか?  慌てて立ちあがると、なおも鈍痛が俺を襲うが、もうそんな些末なことに構っている場合ではない。自分の身に何が起きたのか。理解しているようで、それはまったく違っていた。俺は誰かに襲われたんだ。  神棚の反対側があの重厚な木製の両扉だ。御堂に入った時は引いた記憶があるから、扉は押せば開くはずである。  俺はほとんど体当たりするように扉を開いた。  瞬間、雲の切れ間から射しこむ月光が俺の両目を射した。  思わず月光から目を背けると、不可解な現象を目の当たりにする。
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