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邸宅の敷地内には雪が降り積もっていた。
どうも俺が昏倒しているあいだに雪が降っていたらしい。豪雪に無縁な土地柄にしては珍しく、その雪は十センチ近く降り積もっている。
不可解なのは、その雪の状態だった。
御堂の扉から本宅までの道のりにある雪が、まるで道を付けるように掻き分けられているのだが、その状態がどうも不自然である。シャベルなどで取り除かれたものではなく、まるで大蛇が這ったあとのような半円形の形をしている。
その幅はゆうに三十センチはあり、もし本当に蛇が通ったのだったら、とんでもない化け物だ。
そもそもスコップで掘ったのなら、雪の下から土が顔を出しているはずである。雪は上澄み五センチだけを除かれた状態に留まっている。
不可思議な光景に一歩踏み出すと、大量の雪が靴に入りこんで、俺は飛びのいた。
中途半端に取り除かれた雪が、俺の足下、御堂の扉のすぐ目の前で山になっていたのだ。俺は迂闊にもそこに片足を突っ込んでいた。
目で『大蛇の痕』を追ってみると、俺は道の終着点、本宅の玄関前にもこれと同じように雪が山になっているのを発見した。
俺はその本宅側の雪山の付近に、得体の知れない物が山になっているのを発見する。
また一歩踏み出す。
気持ち悪いので、なんとなく大蛇の痕は避ける。
結果、俺が御堂と本宅の間に来た頃には、靴の中は両方ともびしょびしょに濡れていた。
俺が発見したものは、正体が露見してもやはり訳の分らぬ物だった。
大量の靴が山になり、雪に塗れているのだ。それらのいくつかには見覚えがある。今日この家を訪れている人々の物だろう。
御堂の中で殴られた俺。
大蛇の這った痕。
雪に塗れた靴たち。
俺を殴りつけた人物は、何を考えてこんなマネをしたのだろう。
気ちがい染みている。
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