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ふいに玄関扉が空いて、親戚の女性が顔を出した。
「エイジ。今までどこに言っていたの?連絡も付かないし、心配したのよ」
「うん。ちょっとね」
俺は曖昧に言葉を濁して答える。
なんとなく、あの御堂で伸びていたというのが恥ずかしく思えたからだ。
彼女は、俺から視線を外すと、すぐに敷地内の異変に気がついた。
「なによこれ。エイジがやったの?」
「こんな子供みたいな悪戯はしないよ」
半信半疑といった感じで、彼女は玄関から出てくると、自然とあの大蛇の這った痕を辿る。俺は黙ってあとに続いた。
「御堂の中にいたの?」
「うん」
「ずっと?」
「寝ちゃったみたいだ。おかげで寒いよ」
彼女は苦笑いして、中に戻ったら緑茶でも淹れてあげると言った。
御堂の扉は、俺が先程飛び出した時のまま半開きになっていた。彼女はそれを、両側とも全開に開けた。
「本当は安易に入ってはいけないところなのよ」
そうだろうと思う。
「あら。誰かいるわ……。きゃっ!」
年に似合わず、彼女は女子学生のような声を出した。
「どうしたの?」
「人が、人がいるわ」
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