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「え?」
まさか。僕以外にも御堂の中に人がいるとは、晴天の霹靂である。よもや、俺を殴りつけた輩ではあるまいか?
いや、これもまた不可解だ。
御堂は狭い。狭く、鍵が掛ってはいないとはいえ密閉された空間にいれば、互いの息遣いくらい聞えるはずだろう。
どうして俺は気付かなかったのだろう。
なるほど。確かに誰かが神棚の近く、壁にもたれかかって座っている。
俺は暗い御堂に再び足を踏み入れた。
「あのさ。電気ないの?」
「あるわ。右の壁にない?」
月光が作る自分の影になって、スイッチらしきものを視認することはできない。そこで、僕はそろそろと壁に手を這わせて、スイッチの在り処を探る。
難なく見つけて電灯を灯すと、その瞬間、俺は息を呑んだ。
壁際に倒れていたのは、これまた親戚の男性である。
その様子は明らかにおかしい。頭から血を流しているのだ!
俺は泡を食って近づくと、肩を揺すろうとして逡巡し、手の平を彼の口元に近づけた。
息はなかった。
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