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それまでは敷地内そのものまでもが静謐な空気を孕んでいたのが一変し、大騒動となった。
まず親戚の女性が本宅に駆け込んだ。すると、ぞろぞろと他の親類や客らが飛び出してきた。状況を確認するとすぐに110番通報がなされる。俺は本宅の客間まで連れて行かれた。やがて遠くから緊急車両のサイレンが幾重になって近づいて来た。
敷地内は紺色のツナギと背広を着た人々で溢れかえった。
俺は客間で警察官らの司令塔らしき人物に話を聞かれた。
ただ質問が繰り返されるばかりで、俺は事の重大さをわかっていなかった。いや、御堂で死体が発見されたのだから重大に決まっている。俺は、その重大さを見誤っていた。
有働と名乗った厳つい顔の男が言った。
「彼を殺したのは君だね?」
「ちょ、ちょ、ちょっと!何を言ってるんですか?僕だって被害者ですよ。頭を思い切り殴られたんですから」
「そうです。エイジの言う通りです」
俺の両親が庇う。
「エイジ君は三時間も御堂にいたと証言しています。三時間も死体と一緒にいたと言っているんです」
「そんな馬鹿な」
親父が、刑事の言い分に絶句する。
「証拠はないでしょ!」
俺は腹の底から大声で叫ぶ。
「証拠ならこれからいくらでも出るでしょう。被害者を撲殺した神具からは指紋が採取されたようですしね。大人しく任意同行に応じていただきたいですな」
「任意でしょうが」
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