序章

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「ただいまー」  家に帰って真っ先にするのは、リビングにある小さな仏壇に手を合わせる事。  中にあるのは、俺の妻、礼緒菜の最初の夫・『葛城礼司』の位牌が一基。結婚して一年で交通事故死した。  妻である礼緒菜が引き取らなければ、無縁仏になっていた男だ。  スーツの内ポケットから出したのは、2つのベビーリング。日付は違うが、2つとも妊娠初期の頃に流産した胎児のものだ。……異父兄弟の。  位牌のそばに置く。  スーツが仕事着の俺の職業は、幸か不幸か『葛城礼司』と同じ検事――検察官――だ。  自宅は、礼緒菜が礼司と結婚した時に、彼女の養父――叔父――がお祝いに、と買った物だ。  礼緒菜は、明日裁判があると言っていたから、今日は、事務所に詰めているのだろう。  彼女のいない自宅は、かなり寂しく思えた。 .
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