記憶の欠片

5/8
前へ
/16ページ
次へ
「ちゃんと食べないと」  声と一緒にサラダが増えた。 「……食欲がないんだ」 「一緒に食べよう? 一人のご飯は美味しくないよ?」 「うん……って……礼緒菜?」  なんか会話してるなぁ、なんて思ったら、礼緒菜が目の前にいた。  ――いつの間に……。 「ラーメンも半分こね」  にこっと笑う礼緒菜。 「今はまだ…相原さんでもいいかな?」  病院にいた時より、嬉しい事を聞けた。  それから2人でカップヌードルを食べた。  礼緒菜からアイスコーヒーのリクエスト。 「紫貴のコーヒーは美味しいもんね」  ――え?  無自覚、だよね?  それから2人で残りの5人……義父母とSP……の昼食作り。  礼緒菜は知らない筈なのに、綺麗に流れ作業になっていた。  義父母と礼緒菜と一緒に話をする。  不意に礼緒菜から問い掛けられる。 「紫貴の誕生日は3月28日。 あってる?」 「あってる」 「良かった。外したら最悪」  笑いながらそう言う礼緒菜。 「……朝病院で投げつけられた言葉よりもっと嬉しい」 「何て言った?」 「…………『私の夫は、葛城礼司です。』だから、完全に忘れられたと思ってた」 「そこはね、微妙なんだ。 礼司君が死んじゃったことは受け入れた。さっき、お仏壇を見たから」 「そっか」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加