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彼の隣に座るわけにもいかず、竹井さんと並んで彼の向かいに座った。座席はシートタイプで、彼は向かいのシートの真ん中に座っていたから、私と彼女は彼から同距離、同角度にいる。でもなんとなく彼が彼女に顔を向けている時間のほうが長かった。それは面倒見のいい克己が落ち込んだ彼女を心配してそしてかつ、私との関係がバレるのをに警戒してのこと。そう克己が判断して意識的に竹井さんを見ていたのだと思う。彼は彼女を慰めようと幾重にも優しい言葉をかけた。落ち込んでいる後輩に花を持たせようと私は会話に参加するのは控えめにし、ふたりを見守っていた。
しばらくしてなんとなくの雰囲気に竹井さんは「ひょっとしてつきあってますか?」と聞いていたが、私も彼も首を横に振り、否定した。社内恋愛は禁忌ではないが、私が他の同期より早く主任になった経緯もあり、念のため隠しておきたかった。上司と付き合っているから昇進したと思われたくないし、懇意にある部下を昇進させたとも思われたくなかった。そんな私たちを見て彼女は上司部下そして部署を超えた友情がうらやましいと言葉にした。
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