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「この肉体が魔法を使いやすくしているのかな」
そんな疑問を声に出しながら、私は綺麗に磨かれた金属板を鏡代わりにして、自分の姿を見た。
鏡には、スズやランと同い年くらいであろうか、十歳前後の幼い少年の姿があった。
肩まで伸びた髪は白く、目は黒い。そして、今までに無かった特徴として、天を指すように尖った耳があった。
鏡の中の少年は驚いたような表情を浮かべ、その耳に触れる。
「この耳って、凄くエルフっぽいけど。そんなことあるのか」
私は自身の体ながらも、違和感の抑えきれない耳をグニグニ触る。
当然ながら、耳はどこでも感覚はあった。
そう言えば、私は現在何も持っていないが、魔武器は呼び出せるのだろうか。
ふと、そう思った私は魔武器を呼び出す為に「リライブ」と真名を呼ぶが、その声に反応するものはなく、私の指にも周囲にもその指輪が現れることはなかった。
これからどうするべきか非常に悩ましいが、一先ず、大きな葉とツタの植物で、原始時代よろしく簡易の服を身につける。
服と言っても、体をすっかり隠せる程大きな葉で体の前と後ろを隠し、ツタを帯ひものようにして葉を縛っただけである。そして空を飛ぶ為に杖を作ろうと、比較的背の低い巨木の枝に向けて、風の刃を放つ。
しかし、枝に触れる直前、魔力が乱れて効力を失ってしまった。どうやらこの巨木には魔力を拡散させる力があるようだ。
杖を作ることが出来ない以上、空を飛ぶのは諦めた方が良いだろうか。
そう考えた瞬間、ふと閃いた。この体は魔法を使うのにとても適している。
ならば、杖が無くとも飛行は可能ではなかろうか、と。
私はこの仮説を実証するために、私の周囲の気圧差と風の流れを操り、空を飛ぶために必要な推進力と安定性を持たせる。
そして、私は宙に浮くイメージを頭に浮かべると、魔法を行使する。
その瞬間、風が私を包む。
ここまで、違和感はない。
私は構わず魔法の行使を再開すると、私の体は杖を用いたときと同じように滞空を始めた。
「おお、意外といける」
そして、感覚を確かめながら上下左右への移動、旋回、急発進、急停止と出来る事を少しずつ確認していく。
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