そして私と聖なる木

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「儂はこの木の研究をしておる。研究を始めてもう五十年になろうか。エルフ達が聖樹と呼ぶこの木は、伝承では命を生み出す木と言われていてな。過去にも様々な生き物達がこの木を通じて誕生してきたと言われておる。生まれる主な生物は小動物であるが、例外としてエルフもこの木から生まれる。エルフは一本の聖樹から数人生まれ、自然の摂理に伴い寿命を全うすると、その身を聖樹の種へと変化させる。こうして、エルフは世代交代を行う。しかし、エルフの個体数は、寿命を全うする前に病や魔物によって命を落としてしまうために少ないがな」 で、と老人は前置きをし、木を指していた指を私に向け直した。 「お前さんは、そんな木から生まれたばかりの貴重な存在。だから話を色々と聞かせてもらうぞい」 私はそんな言葉を聞き、何だか面倒なことになってきたな、と思う。一方、老人は嬉しそうな笑みを浮かべていた。
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