そして私と海の向こう

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老人、ネイ・リールに彼の家へと招かれた私は、この世界に来てからの自身の過去、そして聖樹から誕生するに至るまで、記憶にあることは全て話した。 その会話の最中にも彼は疑問に思ったことを口にし、それについての返答を続けていたため、全ての話を終えるまでに三日かかった。 三日も、と思われるかもしれないが、生活する為には働かなければならない。 薪集めから、魚や木の実といった食料の確保、ヤギとイノシシに似た家畜の世話に畑の管理、そして洗濯など、一日の大半は何かしらの作業をしなければならなかった。 そのため、主に話すことが出来たのは夜が中心であった。 また、ネイの生活習慣としてだろう、昼寝の時間も大切な生活の一環であり、話が進まなかったのである。 「スローライフ、というのはこのような感じなのだろうか」 ネイの家で暮らし始めるようになって三日経ち、抜いた畑の雑草をヤギもどき達がいる小屋の片隅に置きながら、私はふと呟く。 前の世界ではこのような生活に憧れていたときもあった。 しかし、ネイを見ていて思ったが、一人でこの生活をするのは少し堪え難いかもしれない。 喋る人が居ないというのも辛いが、歳を重ねて、体調を崩したときに救いがないのが恐ろしい。
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