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「じゃあ先にシャワー浴びさせてもらおうかな」
「ど、どうぞ」
「どもりすぎ、繭子さん」
クスッと笑ってベッドから起き上がった悠馬は抱き合った時のままの姿で、隠そうともせずにバスルームに向かってしまう。
私、
「……っ」
赤面してる。
今更なのに、そんな風に反応してしまうのは、やっぱりそれだけ悠馬の身体も魅力的だから―…
やだ……
私ってば朝から何を考えているんだろう。
早く服を決めなきゃ。
一着だけ、ファッション雑誌のモデルさんが着ているようなワンピースがあるけれども、それは着れない。
どんなに悩んでも結局、白いシャツブラウスに黒いタイトスカートという何時もと代り映えのしない組み合わせになってしまう。
なら、せめてメイクを何時もよりもちゃんとしてみようかな―…
そう思ってポーチを開くけれども、ここに入っているアイテムをフルに使っても、きっと仕上がりは普段とそんなに変わらないってわかる。
お洒落に疎くて消極的な性格をこんなにも後悔してしまうことってない。
せっかく、あんなに素敵な悠馬と外を歩けるのに、その隣りにいるのが私みたいな女じゃ申し訳ない。
鏡に映る自分を見て、深い溜息をついてしまう。
と、
ちょうど私の瞳に紙袋が映る。
〝KOMIDO”と書かれて、だいぶくたびれた感じになってしまった紙袋。
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