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「それ、新しい眼鏡?」
「―…う、うん」
「なら、今日はかけなくてもいいよ」
「どう……して?」
おそるおそる、そう尋ねるけれども、
「―…」
答えてはくれない。
だけど、その言葉に従い、私は眼鏡を置いた。
「綺麗だよ、繭子さん」
耳元で囁かれる、甘く、心地よい言葉。
「だから特別な事なんて何もしなくていいんだよ」
悠馬にそんな事を言われると、本当にこのままでもいいような気持になってしまう。
「朝食を一緒に食べて、それから出かけよう」
「うん―…」
悠馬に丁寧にブラシで梳いてもらった後に鏡を見ると、
「っ……」
何時もよりもずっと、自分が輝いているような気がした。
柘植さんの会社でプロの人の手でヘアメイクをしてもらった時とは全く違う気持ち。
他人から見れば、何時もの私かもしれない。
けれども、心はずっと晴れていた。
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